2人の名ギタリストが絡む

今週は、2人の名ギタリストが絡むアルバムです。

ボサノヴァで一時代をリードしたチャーリー・バードのトリオに、O・ピーターソンのトリオで活躍したハーブ・エリスが招かれるといった形で実現した『ツインズ』。2人の演奏は、あるときは競い合い、あるときは励まし合いながら、互いのリスペクトを忘れないといった趣です。

バードは、1925年生まれで、スタン・ゲッツと組んだ『ジャズ・サンバ』(ヴァーブ)で名をあげました。いわゆるエレキギターでなく、アンプを通さないクラシックギターでプレイしました。リヴァーサイドにいくつかの名演があります。99年に亡くなっています。

エリスは1921年生まれ。カントリーにその源をもつギタリストで、ブルースフィーリングにすぐれていると思います。ピーターソンとやっていたころは軽いイメージがありましたが、リーダーアルバムを聴くとなかなか渋い。私は「憂歌団」の内田勘太郎などを思い起こします。ちょうど1年前の2010年3月に亡くなっています。

このアルバムは、いわゆる「Vディスク」といわれるもので、前線の兵士の慰問用に海軍が放送していたラジオ番組「ネイビー・スイング」のために吹き込まれたものです。米軍は陸、海、空各軍にそれぞれラジオ番組をもっていました。陸軍は「アーミー・バンド・スタンド」、海軍は「ネイビー・スイング」、空軍は「エアフォース・リザーブ・ショウ」といった具合です。

アメリカでは第2時世界大戦のときから「Vディスク」という慰問用のレコードを作っていました。Vはビクトリー。当時から、このツインズ時代まで、テープでなくアナログの盤をカッティングして戦地の放送ブースに届けていました。LPより少し大きめで「トランスクリプション」といって、丈夫なアセテート製だったようです。私も一度、東京の中古レコード屋でみたことがありますが、ジャズに限らずジャンルは多かったようです。購入しても今ではかけようもないけどね。

曲は、放送用ということでどれも短いです。
まずは、最後の「スイート・ジョージア・ブラウン」がいいでしょう。(これは、日本盤のボーナストラックかも知れません。アマゾンで洋盤の曲名を見ると、この曲は載っていません。ライナーノーツを書いている妙中氏は米在住です。最後はボサノヴァの「ソー・ダンソ・サンバ」で締めくくると書いていますが、実際は違います。そこで、放送のさいは私の送ったCDでお願いします。)

この曲は残念ながらフェイドアウトですが、2人のギターの抜きつ抜かれつといったブレイクが聴き所でしょう。

1963年の録音。これを聴いた兵士は、ヴェトナムの泥沼に突っ込んでいったのでしょうね。少し悲しい。
(2011年3月22日)